一穂ミチさんは、BL(ボーイズラブ)小説を書かれていて、2021年に『スモールワールズ』で一般小説デビューした。
デビュー作も読み、次の作品の『パラソルでパラシュート』は、文庫本になって読んだ。
2022年の『光のとこにいてね』で僕はこの作家の作品はぜひ新刊で読もうと思った。
2023年には短編集の『ツミデミック』で直木賞を受賞する。
この『アフター・ユー』は、2022年から3年ぶりの長編になるらしい。

あらすじは、こんな感じだ。
主人公青吾が仕事を終えて家に帰ると、旅から帰ってきているはずの恋人・多実がいなかった。
翌日以降も戻らず何の連絡もない。
青吾は焦りを募らせ、警察に届けを出す。
ある日<多実が見知らぬ男性と五島列島の遠鹿島で海難事故に遭い、行方不明になった>という知らせが届く。
男の妻だという沙都子が現れ、彼女と二人遠鹿島へ向かい、海難事故の謎を追いかける。
一穂ミチさんの描く物語は、とても悲しい物語が多い気がする。
しかも子どもの頃の家庭環境が良くなくて、親の愛情にも恵まれてなさそうな場合が多い気がする。
この物語の主人公青吾も同じだ。
青吾の過去もこの物語が描くコアな部分だったりする。
いくつかのヒントで、青吾と沙都子が事故の真相に近づいていく。
その過程を追いかけていくうちに、物語に惹き込まれて、次のページをめくりたくなる。
引っ込み思案な青吾と、すぐに行動に移す沙都子というコンビが絶妙だったりする。
青吾が偶然耳にする恋人の言葉が、事故の真相へと導いていくのも、面白い仕掛けだった。
どうやらこの物語は、「不在」と「喪失」の物語だそうだけど、とても悲しい物語だ。
どんな原因だとしても、失ったものは2度と帰らない、そんな切ない物語だった。