『熟柿』 佐藤正午

ずっと気になっていた本を買って、やっと読めた。
この本のことは、多分雑誌の書評で知り、読みたいと思った。
佐藤正午さんは、初めて読む作家。

ここからちょっとストーリーに触れるので、ネタバレ注意です。

主人公のかおりは、ある夜泥酔した夫を乗せて帰宅する途中、人をはねてしまう。
雨の降る夜、少し現実感を無くしていて、人をはねてしまった感覚が幻のようにも思えたのか、確認もしないでそのまま走り去って行く。
その罪をつぐなって自由の身になるが、夫からは離婚され、獄中で出産した子供にも会えない。
仕事を転々としながら子供のことを思いながら、子供のためにお金を貯めることだけを生き甲斐にして生きていく物語。
子供に会える時が来るのをじっと待つ。
まるで熟した柿の実が自然に落ちるのを待つように。

ざっくりだけど、そういう物語だった。
とても重たい物語だったが、熟柿のように少しずつ強くなって行く主人公も描かれていた。
重くて暗いばかりではない気がする。
そして物語にあっと言う間に惹き込まれているから、長いけれどページを捲りたい、次はどうなるんだろうという気持ちでページが進む。

僕の場合は読了まで日数がかかった気がするが、先に読んだ奥さんはあっと言う間に読み終えていた。
一気読みだった。

ちょっとしたことで、マイナス方向へ足を踏み外すことはあるものだろう。
しかし、後悔しても元には戻れない。
そんな悲しさがあり、罪を犯した人に対する疎ましさも描かれていたりする。
足を踏み外したがために、どんどん負の連鎖で不幸になって行くのが、とても可哀想だった。

時が来るのをじっと待ち、少しずつ積み上げて行けば、光は見える。
そんな気がする物語でもあった。

余談だけど、しばらく寝かせてこの記事を書いた。
やわらかく熟してくれたかどうかは別として。
読み終えたのは11月11日、もう10日以上経ってしまった。

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