『婚活マエストロ』宮島未奈
今月の6冊目(2024年:107冊/累計:1,932冊)
40歳独身男性、Webライターの猪名川健人は、とある婚活会社のホームページのライターの依頼を受ける。
取材をかねて婚活パーティに参加するが、司会を担当する鏡原奈緖子は「婚活マエストロ」と呼ばれていた。
健人は参加者としてだけでなく、主催者側として婚活パーティを手伝ったりする。
人生を諦め学生時代から住んでいるアパートで暮らし、半ば引きこもりのような生活をしていた健人が、婚活パーティを通じて徐々に意識が変わっていく。
前作の『成瀬は天下を取りにいく』と『成瀬は信じた道をいく』の主人公成瀬と違って、今回の主人公の健人はどこにでも居そうなキャラクターだった。
学生時代からずっと同じアパートで暮らしているという設定は、現実にはあり得ないと思うくらいだけど、キャラクター的には前作ほどのインパクトはない。
最初は傍観者として主人公の行動をただ見ている感じだけど、なぜか主人公や登場人物達を応援している自分に気づく。
もちろん婚活パーティに興味があるわけでなく、主人公の再生にエールを送っているのだ。
著者の書く物語に惹き込まれてしまっているのか。
登場人物は善い人ばかりだった。
一部少数だけど、詐欺師まがいの登場人物はいたが、大半の登場人物は善人である。
成瀬に近いキャラクターの登場人物も居たりするのが、とても面白い。
人と人が良い感じに繋がっていくところが、この物語の魅力かもしれない。
安心して読めて、とても面白い小説だったというのが読み終わった時に感じたことだ。
次回作が出たら、またすぐに読んでしまうだろう。
次はどんな物語なんだろう。とても楽しみだ。
文藝春秋社 2024年10月25日