『母親ウェスタン』原田ひ香
今月の3冊目(2024年:104冊/累計:1,929冊)
母親のいない子供の母親として生きていく主人公、広美の生き方を描いた物語。
広美には自分が産んだ子供が1人だけいるが、今は生き別れになっていて、その子の母親でいられない。
その代わりに、他人の子供、しかもあまり恵まれていない子供たちの母親代わりの人生を歩んでいる。
母親代わりをずっとつとめているのなら普通にありそうな話なんだけど、突然姿を消してまた次の子供の母親代わりをするという話なのだから、変わっている。
母親がいない子どもと言うことは、お父さんがいるわけだけど、いろんな男を渡り歩くという話ではない。
広美が惹かれるのは、子供なのだ。
他人の子なのに、ある時は身を挺して守ったりする。
良い話なんだけど、ある日突然いなくなって、その子供のことは忘れてしまうのだ。
ちょっと寂しそうな人生なんだけど、感傷的な物語ではなく、広美を客観的に淡々と描いていく。
まるで西部劇に出てくる町を渡り歩いていくガンマンのような人生なのかもしれない。
放浪癖なのか、飽きっぽいのか、定住できないのか。
やはり自分の子供の母親でいられないから、その代わりに他人の子供を救っていくのだろうか。
かなり変わった主人公なんだけど、原田ひ香さんの小説なのだから驚かない。
どんな終わり方をするのか、とても興味深かったのだけど、終わり方のことは書かない。
先へ先へページを捲りたくなってくる、とても面白い小説だった。
光文社文庫 2015年1月20日